2020年春に日本に蔓延を始めた新型コロナウイルスは、現在も日本社会に大きな影響を及ぼしています。もちろんキャバクラも、コロナの影響を大きく受けました。コロナ禍によって閉店・廃業となったキャバクラもたくさんあります。

しかし反対に、逆境であるコロナ禍の中で活路を見出し、新規顧客を獲得しているキャバクラ店舗も出てきています。「ウィズ・コロナ」「アフター・コロナ」の時代に向けて、キャバクラはどのように変化をしていけばよいのでしょうか?

ここでは2020年春から2021年春の一年間にかけて、コロナがキャバクラにどのような影響を与えたかを見ていきます。「コロナとのこれからの付き合い方」を考える参考となるはずです。

 

2020年3月:キャバクラ等への自粛要請

2020年2月に日本に入ってきたコロナウイルスは、たちどころに日本各地に流行し、各地で感染者が出てくるようになりました。

3月3日には、当時の内閣総理大臣である安倍首相が全国の一斉休校を提言。3月11日には、センバツ高校野球が初めて中止されたこと等を見ると、いかに当時の動揺が大きかったかがわかります。

しかし日本はもちろん世界全体での大規模なパンデミックに対し政府もすぐにはその他の根本的な対策を打ち出すことがなかなかできませんでした。

そんな中、キャバクラ等への「夜の街」に対する風当たりが強くなっていきます。

3月30日には東京都の小池百合子都知事が「夜間の酒場等への出入りを控えてほしい」と緊急会見で発言。キャバクラ等の店舗に対して自粛要請も行われるようになりました。

しかしこの段階で営業自粛に踏み切った店はまだ少数でした。とは言え『六本木・FABRIC LOUNGE TOKYO』等の先端を行くキャバクラが早期の営業自粛に応じたことは、業界にも大きな影響を残しています。

 

2020年4月:緊急事態宣言による休業

増え続ける新型コロナウイルス感染者と死者数を鑑み、4月7日、7つの都道府県に対して緊急事態宣言が発令されました。さらに4月16日には、この宣言の対象は全国へと拡大します。

緊急事態宣言では、まず企業に7割までの出勤者の減少が求められました。さらに飲食店やキャバクラ等に対しては、非常に強い形での営業自粛が求められたのです。

このような状況下で、多くのキャバクラは休業せざるをえなくなりました。コロナウイルスの感染経路や感染力がよくわからない状態の中だったため、そもそもキャバクラ等に出かけてくる顧客も激減。無理に開店をしても収益が入らず、人件費も払えないという店も珍しく無い状態だったのです。

ただ歌舞伎町等の繁華街の一部では、営業自粛を行わないキャバクラやホストクラブもあり、これが”夜の街”に対する政府や世間の風当たりをますます強くさせる一因ともなります。

 

2020年5月:ZOOMキャバクラが注目を浴びる

ZOOMキャバクラ
緊急事態宣言下、店舗営業ができないキャバクラが増える中、急激に注目度を伸ばしたのが「ZOOMキャバクラ」等のオンラインキャバクラです。

ZOOMキャバクラ(オンラインキャバクラ)とは、パソコンやスマホを使った「ビデオ通話」でキャストとお客様がお話をするスタイルのキャバクラのこと。濃厚接触につながらないという安心感、全国のキャバ嬢と話ができること等から人気を得ました。

「ZOOMキャバクラ」が流行した理由については、次のような影響も上げられるでしょう。

  • スマホの普及:誰もがカンタンに自宅等でのビデオ通話を楽しめるようになった
  • 大容量通信の普及:4G通信の定着により、ビデオ通話を途切れることなく楽しめられるようになった
  • ECショップの簡易化:オンライン上のキャバクラを以前に比べてカンタンに設置できるようになり、チケットの売買もスムーズに行えるようになった

とは言え、どのキャバクラもがオンライン化に成功をしたというわけではありません。ZOOMキャバ・オンラインキャバの展開では、次のような「格差」が出ました。

オンライン化対応のスピード感

まず顕著だったのが「オンライン化」への対応の速さ、そのスムーズさの違いです。日頃からサイト運営やSNS展開等のWebマーケティングに積極的なキャバクラでは、外注業者との連携によってスムーズにオンライン化を果たし、また顧客が使いやすいキャバクラシステムを展開しました。

しかしWebマーケティングに慣れていなかった店舗では、どうしてもオンライン化に手間取ってしまうことに。時間がかかった結果「二番煎じ・三番煎じ」になり、集客に失敗する店舗も珍しくない状態でした。

キャストと店舗の連携

ZOOMキャバクラでは、原則としてキャストの自宅での通話が行われます。ZOOMキャバに積極的な店舗では、キャストへの次のような協力も行われました。

  • 自宅風スタジオの貸与・提供
  • 私服風スタイルの衣装貸与
  • オンラインドリンクシステム等のシステムの考案
  • オンラインイベント等の考案

キャストの努力だけに頼らずに「顧客獲得」のための新機軸を打ち出した店舗は、オンラインでも多くの顧客を掴み取ることができたのです。

 

2020年6月:歌舞伎町がコロナ対策に協力

PCR検査
前月2020年5月25日には、約1ヶ月半ぶりに緊急事態宣言が解除。ともあれコロナ感染の危機は避ったわけではありません。

都知事や官房長官は歌舞伎町等の繁華街を「夜の街」と名指しし、「風営法での立ち入りも可能である」として、激しい言葉でキャバクラ等の統制を行おうとしていました。

5月~6月頃は感染者の感染経路をたどることが感染抑止の重要なポイントであったため、プライバシー対策のために顧客情報を渡さないキャバクラ等の「夜の店」に対して、政府側もしびれを切らしてる状態だったのです。

そんな中、キャバクラやホストクラブ等への信頼を得るべく歌舞伎町が対応したことが話題となります。

PCR検査やコロナ対策の勉強会を実施

新宿区と歌舞伎町の関係者達が連絡を取り合い、会合を行ったことで、風向きは大きく変わりました。新宿区長「コロナ感染防止は私達全体の問題だ」と呼びかけたことに歌舞伎町関係者達も応えたのです。

歌舞伎町におけるホストクラブや一部のキャバクラでは、次のような新型コロナウイルス対策が取られるようになりました。

  • キャスト・スタッフへのPCR検査の実施
  • コロナ対策についての勉強会の実施
  • 接待がある飲食業特有の感染リスク研究
  • 接待店向けの新宿区独自のチェックリスト作成 等

上のような歌舞伎町の動きは、TV・雑誌・ネット等でも大きく取り上げられ、キャバクラ等の夜の街に対するイメージアップにも助力しました。

 

2020年7月~8月:キャバクラ店舗でのコロナ対策

キャバクラ店舗でのコロナ対策
緊急事態宣言も開けた夏、キャバクラ各店舗では接待を伴う飲食店ならではの「新型コロナウイルス対策」が考えられるようになりました。店舗での対策がキチンと取られているかどうかが、客足を掴む要素にもなってきたのです。

パーティションの設置

まず重視されたのが、クラスター発生を防ぐための顧客同士の飛沫感染防止対策です。席の間にパーティションを設け、飛沫対策を行う店舗が増えました。

キャバクラ店内インテリアの雰囲気を壊さないアクリルパーティションは、2021年春時点でも品薄となるほどの人気となっています。

扇子等を使った飛沫対策

2020年夏頃には、新型コロナウイルス対策では、会話等をする際にマスクを着けることが有効となることがわかってきました。しかしお客様とのコミュニケーションが重要となるキャバクラでは、マスクをしたままでお話をするというのは難しいところです。

そこで直接的に飛沫が飛ぶのを防ぐ対策を考えるキャストも増加。雰囲気を壊さないように扇子等で口を覆う対策をするキャストも増えました。

手指消毒・除菌の徹底

スタッフ・キャストはもちろんのこと、顧客への手指消毒の徹底を求めるのも重要なポイントとなりました。キャストのコロナ感染への理解度も必要となるため、事前に勉強会をする店もあったようです。

キャスト・スタッフの体調管理

万一のクラスター発生を防ぐため、キャスト・スタッフの体調管理を徹底することも重要なポイントとなりました。非接触型温度計を購入し、発熱の恐れがないか全員をチェックすることを習慣づけた店も多いです。

 

2020年夏~秋:キャバ嬢と持続化給付金格差

持続化給付金
第一回の緊急事態宣言は明けたとは言え、キャバクラ等の接待を伴う飲食店への客足は完全に戻ったわけではありません。多くのキャバ嬢は収入の激減に困るようになりました。

このような中、政府の施策である「持続化給付金」の申請ができるのかどうかで、キャバ嬢達の間にも格差が生まれるようになります。

持続化給付金とは、前年の所得の50%以上に減少したことを示す書類を提出すれば、最大で100万円が給付される制度です。当初は確定申告等で「事業所得」として収入を申告している人のみが制度対象でしたが、6月下旬には対象者が雑所得や給与所得の場合でも、持続化給付金の対象となるように制度が拡大されたのです。

ところが、働き方や申告状況等によって、持続化給付金を受けられないキャストやコンパニオンもたくさん出てきました。

長く働いているキャストが有利に

持続化給付金を得るには、まず2019年分(令和元年分)の所得を確定申告してある必要があります。確定申告をしていなかった場合、さかのぼって確定申告をすれば、給付対象となれるわけです。

ただ確定申告をする際には、「どの会社から、いくらお金を得たのか」を明確にする必要があります。同じお店で数年働いているキャストであれば、前年の収入を確認して確定申告を行い、給付申請をすることも難しくないでしょう。

しかしキャストの中には勤務期間が短く、前年所得が証明できない人も少なくありません。「以前の店には協力が得られない」「領収書や請求書を残していない」等の理由で確定申告できず、持続化給付金が得られないキャバ嬢も続出しました。

店舗の協力も一要素に

慣れない税務申告や申請を自分ひとりで行うのは、キャバ嬢にとっては高いハードルです。キャバクラの中には税理士等のプロと相談し、キャスト達の持続化給付金申請に協力する店舗もありました。

 

2020年11月:営業時間短縮要請・派遣キャバ嬢も増加

派遣キャバ嬢
気温・湿度などの低下に伴い、秋が深くなるとコロナウイルスの感染率は再度活発化。北海道が独自に警戒ステージを「3」に上げ、11月19日には東京都での感染者数が500人を突破する等、特に都市部での感染が深刻化してきます。

札幌・大阪等の大都市部では、独自の営業時間短縮要請が行われるようになりました。また営業時間短縮に応じない一部キャバクラ等の店舗について、知事が店名公表を行うといった厳しい措置も取られるようになったのです。

繰り返される営業時間短縮や過剰な報道によってで、キャバクラへの客足はまた途絶えるようになりました。店舗側もキャストの出勤数を減らさざるを得ず、一時的に地方の実家に戻るキャストの数も増えていきます。

キャバ嬢の働き方が変わる

派遣キャバ嬢とは、専門の派遣会社に登録し、指定されたお店に派遣されるキャバ嬢のことです。従来の「お店とキャストが契約する」という形ではなく、お店は派遣会社と契約して、必要なときだけキャストを寄越してもらいます。

実家に戻って連日の勤務が難しくなったキャバ嬢や、顧客が集まりにくい地域に暮らすキャバ嬢等がこのシステムを使うように。また店舗側もたくさんのキャストを抱えなくて良いため、曜日等に応じて派遣キャバ嬢を利用するという方法を取る店も増えました。

 

2021年1月~3月:再度の緊急事態宣言による昼キャバ化

2021年1月7日、1都3県に対して再度の緊急事態宣言が行われました。昨年に比べて営業自粛は強く求められてはいませんが、キャバクラ等を含む飲食店は午後8時までの営業時間の短縮を求められたのです。

3月21日をもって緊急事態宣言は解除されましたが、3月下旬現在も一部の都道府県では営業時間を夜9時までとする要請が行われており、この要請は早くとも4月下旬までは続くと見込まれています。

朝キャバ・昼キャバの台頭

キャバクラ等の夜間・深夜の営業が自治体によって厳しく取り締まられるようになった結果、特に都市部では朝や昼に営業を行う「朝キャバ」「昼キャバ」が注目されるようになっています。

しかし関係者の中には、「感染問題の解決になっていない」「業界モラルが問われる」等、これらの営業形態を疑問視する声も見られるようです。また「時短」という政府の対策や、その協力金が1店舗あたり6万円という少なさにも不満の声が上がっています。

 

おわりに

キャバクラ等の接待を含む飲食店にとって、2020年春からのコロナ禍の一年はこれまでに類を見ない「冬の時代」です。しかし中には現在も好調な売上を維持しているキャバクラがあるのも事実。「コロナ不況だから」と諦めず、苦境にチャンスを見出している店舗もあります。

例えば六本木等の人気キャバクラでは、「良質なキャバ嬢やスタッフが夜職を離れやすい今こそが、人材獲得のチャンス」として、人材募集やスカウト等に力を入れているようです。

WEBマーケティング展開の重視、SNS等による知名度アップ等、「コロナ後」の顧客獲得に向けてシフトチェンジしている店も見られます。「不況の今こそ店やキャストは何をすべきか」を考え、実施ができるかどうかが、今後のキャバクラ店舗の明暗を決める要素となることでしょう。